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「幻だった闇のファイター」で、格闘技をやる聴覚障害者が出てくるマンガがあまりないことを述べた。では、格闘技マンガには聴覚障害とは関係ないのかというと、案外関係があったりする。ここでそのマンガを紹介する。
「其の七の者」第3巻(講談社コミックス) 130頁
2000年「月刊少年マガジン」
時代は明治初期、合気柔術の使い手が主人公。治外法権を悪用して人身売買をはかる密売団から娘たちを助けようとする。ボクサーを何とか倒すが、続いて出てくるレスラーにはかなわず、相手に捕まって船内に閉じこめられる。
このシーンは、レスリングのレスラーの耳をつぶすところ。これでレスラーを倒し、娘たちを救出できる。
耳の中の三半規管を壊すことで平衡感覚を狂わすのがねらいの技であり、べつに聴覚をなくすのが目的ではない。
「超格闘伝説 あした輝け」第6巻(ヤングジャンプ・コミックス) 82頁
1997年「週刊ヤングジャンプ」
女子格闘技戦で、相手の両耳の鼓膜を破ったシーン。
これにより、自分への指令の声が聞こえなくなったためにパニックにおちいり、負けることになる。
「龍狼伝」第24巻(講談社コミックス) 99頁
「外伝・仙界修行編」2001年「月刊少年マガジン」
中国の三国志時代で、「闘仙術」という仙術を使った武術を身につけようとする。その修行のために、師の手で目と耳をつぶされる。物も見えず何も聞こえないが、代わりに気の力で万物を感じ取る能力に開眼する。
耳をつぶすとは物騒ではあるが、格闘技にはこんな技もある。
ただし、聞こえなくするのには、単純に鼓膜を破ればいいわけではない。確かにその場では聞きづらくなるが、鼓膜の傷は治るのだ。それに、試合で鼓膜が破れるというのはわりとあるケースらしい。だから僕は、格闘技マンガで耳の鼓膜が破れただけでは、聴覚障害のマンガには入れない。だいぶ前のマンガ「男組」(雁屋哲・池上遼一)でも耳をつぶすシーンがあったにもかかわらず、マンガリストには「聴覚障害」として登録してないのはそのため。
したがって、ここにあげたマンガは、単に鼓膜が破れたから入れたのではない。
「其の七の者」の場合は、鼓膜も破ってはいるが、それよりも三半規管を直接に突き壊す技なのだ。平衡感覚を壊して相手を戦えない状態にしてしまうのが目的の技であり、聴覚をこわそうとしているわけではない。が、こんな技だと当然聴覚も壊してしまう結果となる。そして、これは直らない。よって、相手を聴覚障害にしてしまう理由で、聴覚障害のマンガに入れている。
なお、「其の七の者」では、別のところに合気柔術の技で一時的に目と耳と声をきかなくするシーンがある。
「超格闘伝説 あした輝け」は、単純に鼓膜を破っているだけ。しかし、この選手の場合は試合中に催眠術による指図に従って行動している。聞こえなくなると指図が聞き取れなくなり、自分では行動できなくなって敗れてしまう、というストーリーになっている。聴覚がカギになっているケースなので、聴覚障害のマンガに入れている。
修行のためにあえてハンデをつける、というのはよくある話で、目がきかないようにして修行するケースは時々ある。しかし「龍狼伝」のように聴覚を奪うケースは、他には覚えがない。珍しいケースだと言えるだろう。
なお、相手の耳をどうやってつぶしたのかがわかるカットを入れてないのは、故意である。実際にやって見ようという人が出てこないようにするための配慮だ。
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