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マンガ「遥かなる甲子園」の後で出た高校野球マンガで、聴覚障害者が出ているものが一つだけある。
取材・構成:根岸康雄 作画:斎藤むねお 1997年「週刊少年サンデー」32、33号
少年サンデーの「感動王列伝」シリーズのドキュメンタリー物で、1997年に春の選抜高校野球甲子園大会に出場した和歌山県の日高高校中津分校野球部の話。分校の野球部としては初めての出場という。
元々軟式野球部しかなかった分校だが、村おこしのために野球経験のある教師を説得、野球部を創る。
この野球部員に、西田という耳の聞こえない人がいた。補聴器をつけて会話しており、手話は使わないようなので、ろうではなくて難聴児らしい。しかし、野球をしているときはさすがに補聴器をはずすので、声が聞き取れないというハンデがある。
「感動王列伝3」(小学館) 43頁
守備練習の時、監督は西田にアドバイスするが聞こえていない。西田のそばにいるチームメイトたちが西田に教えていないのに気づき、監督はカミナリを落とす。
「なんで、ニシに声かけんのやぁ!!」
「ニシはみんなで大声出さんと、聞こえないんや!!」
「みんなが助け合わんで、どうするんや!!」
「感動王列伝3」(小学館) 45頁
それからチームメイトたちは西田にきちんと大声で指示を伝えるようになった。
それを見届けて監督は「そうや。これが中津分校野球部や!!」と心の中で声援を送る。
「感動王列伝3」(小学館) 74頁
練習をさぼった一年生たちが「腕が痛かったもんで」と言い逃れするのを真に受けた西田が、薬草としてツワブキの葉を取りに、真夜中に山に入る。
「かまへんかまへん。わし、いつもみんなに世話かけてるさかい。」
後で知り、西田を心配してあわてて山探しする監督と部員たちだが、西田は平然と「もう大収穫や」とツワブキの葉とともに姿をあらわす。
そして本気で後輩たちの腕の手当をする西田に、涙ながらに「治りました」と答える後輩たち。
西田たちが三年生になって、県大会予選初勝利をめざす。
監督は西田について
「創部したときから、おまえは誰よりも一生懸命にやってくれた!」
「わしはあいつに…ホームランを打たせてやりたいんや!!」
そして西田の打球を相手が取りこぼすのを見て、監督はランニングホームランを指示する。チームメイトだけでなく、スタンドの観客まで巻き込んで「まわれーっ!!」と大声で声援。これを聞き取った西田は、ホームに突入。
結果は残念ながらアウトとなる。ここが、一番のクライマックスシーンだろう。
ハッキリ言って、僕は高校野球のことは知らん。興味もない。
だから、この日高中津野球部のことはよく知らない。これを書くためにウェブ検索して、いろいろと出てきたのにビックリしたくらいだ。高校野球フアンには有名らしい、ということは認識できた。
村おこし云々は本当の話のようで、中津村のサイトにこの野球部の話が載っていた。地元ではそれなりの強豪校らしい。分校の生徒の大多数が野球部員とか……。
僕がこのマンガを読んで気になった点は、監督が時々内股立ちになること。普通だったらマンガに描く場合は、監督の力強さを演出するために、女っぽいイメージのある内股立ちはさけるものだが……。実際の監督でもこんな内股立ちするクセがあるんだろうか。
「そんなツマランことが気になるんか」とつっこまれそうだが、逆に言うとこれ以外に注目すべきものがなかったのだから仕方ない。聴覚障害者をテーマとしたマンガとしては、あまり面白くないのだ。聴覚障害としては軽度のようだし。
まあ、西田に指示を伝えようとしなかったチームメイトを怒った監督の姿勢は、評価してもいいかなとは思う。
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