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石渡 治
1999~2001年 少年サンデー連載 (小学館)
宇宙飛行士をめざす少年の成長物語。話の中心となるのは主人公の
少年サンデーコミックス「パスポート・ブルー」第2巻 177頁
この手話を使う少女がプー子。
耳が聞こえないのではなくて、言葉がしゃべれない。そのためにコミュニケーションの手段として手話を使っている。相手の話はちゃんと耳で聞いている。
そのために、まっすぐと空知はある程度手話ができる。
プー子は山中で崖から落ちて頭を打ったために、言葉がしゃべれなくなった。まっすぐはその場にいあわせながらも、プー子を助けることができなかった負い目を感じている。それでもプー子は一途にまっすぐを愛している。
このカットの当時では人気アイドルとして売り出し中で、後にハリウッドの大スターとなるが、まっすぐに対する愛情は変わらない。
アイドルながら、気象に関する知識と能力は抜群で、この後つくば市に起こる異常気象を予見する。
聴覚障害でなく言語障害で手話を使うパターンは、他のマンガにもある。実際には、そういうケースはあまり多くないようだが。障害者のシンボルとして手話を使いたいが、声なしの手話ばかりだと、いちいち会話の内容を別の方法で表現しなければならない。また、会話は手話のできる人同士しかできなくなる。そこで便宜として聴覚障害でなく言語障害を選んだのだろうと思う。
手話のできる人がプー子の話を声にしてくれるし、プー子からの会話には制約があっても、プー子へは制約なく話が伝わる。つまり、ストーリー進行の都合で言語障害にしたのだと考えられる。
少年サンデーコミックス「パスポート・ブルー」第3巻 98頁
筑波宇宙センターの低圧チェンバーに閉じこめられた、まっすぐたち。
激烈なダウンバーストと落雷で、宇宙センターの施設が破壊され、施設全体が帯電して出られなくなってしまう。
低圧チェンバーの中にいるまっすぐと外にいる空知が手話で会話するのが、このシーンだ。ここで使っている手話は「できない」という意味。
結局は空知の機転とガンバリで、宇宙服を見つけだして帯電しているドアを開けるのに成功する。
何かに閉じこめられて、相手の姿は見えても声が届かないときに手話を使う、というのもいくつかのマンガで時々見られるパターンだ。古いマンガでは、読唇術を使っていたパターンである。
少年サンデーコミックス「パスポート・ブルー」第9巻 179頁
このシーンは、べつに障害者とは関係ない。宇宙ロケット会社の倒産を回避する吉報の電話があったことを伝える場面で、「電話」の手話を使っている。
元々はろうあ者が使っていた手話だが、一般の人にも「電話」のサインとして広まったようだ。別のマンガにも「電話」のサインが出ている。しかし、この手話は日本手話のもので、このカットの舞台となっているアメリカでは使われているはずがないのだが……。「電話」はアメリカではまた違う手話表現になる。
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